GTD(Getting Things Done)は『中途半端』に実践するのがちょうど良い

タスク管理の手法を学習しようとすると、「GTD(Getting Things Done)」という手法がよく取り上げられます。しかし、GTDは厳密に行なおうとすると、そのタスク管理のために時間が取られてしまい、本来の目的である「業務を効率的に行なう」という所に効果が出ないことがあります。

まずは、GTDとはどのようなタスク管理手法かを、簡単に紹介します。

  • 今、頭の中にあるすべての「やるべき事」を洗い出して、「Inbox」に書き出します(Todoツールなど) [収集]
  • Inboxの内容を確認しながら、次の5つに分類します [処理]
    • すぐにできる内容 → やってから「アーカイブ」へ(2分以内に終わる仕事)
    • 今すぐにはやらないが、次にやるべき → 「次のアクション」へ
    • 複雑でタスクを分解しながら片付けていかなければならない → 「プロジェクト」へ
    • 相手の連絡待ちなど → 「連絡待ち」へ
    • 特定に日時に行う作業 → 「カレンダー」へ
    • いつかやろうと思っている → 「いつかやる」へ
  • 日々発生する「やるべき事」は一度「Inbox」に投入し、毎日処理をしていく
  • 残っている作業は、随時内容を確認しながらこなしていく [整理]
  • 週に1回程度、レビューを行ない「連絡待ち」や「いつかやる」に分類された作業で行えるものがないかを確認する [見直し]

こうして、各タスクを実行していくことで、先延ばしを防ぎ、無駄な作業をなくしながら作業ができるというのが GTDという手法です(筆者の解釈なども入っているため、違う部分があるかもしれません)。

GTDの運用が難しい理由

さて、この GTD。始めたばかりの頃は、かなり楽しいです。「あれをやらないと」「これもやらなきゃ」と考えながら、作業をこなしていくのではなく、すべてのやるべき事がリストに分類されていて、「Inbox」と「次のアクション」をこなしていくとタスクがどんどん減っていくのは、気持ちがよいです。

しかし、だんだん慣れてくるに従って、GTDは次のような点で窮屈になってきます。

やるべき事をすべて書き出すのがつらい

GTDでは、それこそ「牛乳を買う」といった日常の作業までをすべてリストに書き出して、淡々とこなしていくべしとされています。筆者も最初は律儀に「メールを返信する」といった業務を、毎日のスケジュールとしてタスク化し、毎日それに従って作業をしていました。しかし、メールの返信はタスクになっていなくても自然に行える作業なので、いつしかタスクを完了にするのを忘れてしまって、前日の〆切が過ぎたタスクとして残ると言った事が起こり始めました。

レビューがつらい

GTDでは、日時レビュー・週次レビューといったタスクを再度整理し直すためのレビュー日が定められています。これをしないと、いつまでたっても「いつかやる」などに分類したタスクに手がつけられないまま、日々発生する細かい作業(2分以内に行える作業)をこなすだけになってしまいます。

しかし、今度はそのレビューを行なう時間が取れなくなります。また面倒に感じてしまいます。それで、いつしか「いつかやる」には手がつけられなくなってしまいました。

プロジェクトの分解が面倒

複数のタスクから成り立つ「プロジェクト」というものに分類されたものは、そこから作業を分解して、タスク化すべしとされています。しかし例えば、「WordPressを実装する」といったタスクの場合、確かにそれ自体は数日かかるのですが、それをわざわざ「トップページを作る」「ページAを作る」などと分解していくと、その方が面倒になってしまいます。

GTDを「中途半端」に導入する方法

ということで、筆者は今ではこの GTDを中途半端に導入して使っています。主に採用しているのは次の部分。

  • やるべき事…のうち、忘れそうなものを Inboxに
  • Inboxの内容のうち、今日中にやらなければならない作業は行ってアーカイブに。それ以外は「次のアクション」に。
    (作業の見込み時間では判断せず、〆切ベース)
  • 「いつかやる」には分類せず、「次のアクション」にすべて入れて、リストを毎日眺めるように
  • 「連絡待ち」「カレンダー(スケジュール)」は利用するが、必ず締切日を適当にも設定して、アラートが出るのに任せる。リストは見直さない。
  • 「プロジェクト」になるような大きなタスクは、Todoツールではなく Backlog

日時レビュー・週次レビューは行なわず、「Inbox」と「次のアクション」だけを行き来します。タスク自体も忘れそうなものだけを登録しているので、それほどの件数にはならず、ゆるくタスク管理ができます。ただし、〆切が決まっているものなどはきちんとアラートが出るため、面倒にもならずにタスク管理することができます。

ものごとは、ルール通りに運用しようとすると逆にそのルールが首を絞めてしまうこともあります。まずは、セオリーに従って作業をしつつ、自分なりにアレンジをして使っていくと良さそうです。