2021年に7年ぶりに Macに戻った話と M1 Mac

筆者は 2015年の Windows 10発売のころから、Windowsの魅力を感じて OS X(現在の macOS)から乗り換えてこれまで愛用してきました。

しかし、今年(2021年)、Apple M1チップが登場してから、Appleに気持ちが戻ってしまい、再び乗り換えました。この記事では改めて、なぜ今 macOSがおすすめなのかについて紹介しましょう。

なぜ Windowsがおすすめだったのか

その前に、なぜこれまでは Windowsがおすすめだったのかについて紹介しましょう。Windows 10という OSは実は、誕生当時は非常に夢のあるプロジェクトだったのです。

PCとタブレットの融合

Windows 10の魅力は、タッチデバイスに対応したもので、Microsoftが発売した Surface Proという端末はタブレット端末にキーボードがドッキングできるという革新的なスタイルで、その後の PC/タブレットの開発に刺激を与えました。
今後、タブレット端末の重要性が増す中で、PCスタイルとタブレットスタイルを1つの端末で行えるというのは非常に魅力的でした。

スマートフォンでも利用できる

Windows 10は実は、スマートフォンでも動作するように設計されていました。Microsoftは、かつて Windows CEという携帯端末向けの OSを開発していて、実は iPhoneよりも前からスマートフォンのようなもの(PDA)に着目していました。
しかし、なかなかうまく行かず Windows 10で改めてスマートデバイスへの再起を図っていたのです。ただこれはうまく行かず、撤退したのは記憶に新しいところです。

クローズドな思想からオープンな思想へ

Windowsがエンジニア界隈に嫌われる理由の1つが、Windows 7以前にあったクローズドな思想です。ウェブブラウザーの IEが独自のレンダリングエンジンを貫いて嫌われていたのはご存じの方も多いでしょう。
さらに、MS-DOSという独自の OSを継承したシェルや文字コードなど、サーバーコンピューターなどとの相性が最悪で、開発に使いにくい環境でした。
しかし、Windows 10からは文字コードにも UTF-8が採用され、Microsoft Edgeも Chromiumベースになるなど、オープンな思想に変わりました。

これらが、筆者が Windowsを好きになった理由でした。

失速した Windows 10の夢

しかし、残念ながら Microsoft程の先進的な企業でも、夢を叶えるのはたやすいことではなく、これらの願いは次々に失速します。

タブレットとしては非常に使いにくい Windows 10

PCとタブレットの融合を目指したはずの Windowsですが、一向にタブレットとして使いやすくなりません。特に文字入力周りなどは最悪で、ほとんど使い物にならないまま、数年が経過してしまいました。筆者も今では iPadを使っていて、Windowsをタブレットとして利用しようという気は起こりません。

スマホの失速と Androidとの相性

先の通り、スマホ市場を狙っていた Windows 10ですがうまく行かず、Microsoftは iOSや Androidと合わせて Microsoftのプロダクトを使ってもらえるように舵を切ります。
実際、Microsoft自身も Surface Duoという Android端末を開発して大々的に発表したのですが、これがいまだに日本などの市場では発売すらされず、動きの速いスマホ市場で次の一手も出せずにいます。
Androidを Microsoftがカスタマイズするでもなく、いくつかのアプリをリリースするのに留まっていて、正直スマホとタブレット・PCの融合については、Appleの開発力に数年以上の遅れを取っているのが現状です。

クラウドの成功とプロダクト開発の今後

では、Microsoftは不調なのかといえば全くの逆で、企業としては絶好調です。2021年第2四半期の決算では過去最高の売上・純利益をたたき出しています。

この稼ぎ頭は、クラウド市場。同社の Azureや Microsoft 365といったクラウドサービスが非常にうまく行っていて、正直 Microsoftにとって Windows 10であれこれ勝負をするよりも、クラウドを拡充して AWSなどと戦っていた方が堅実なのです。

Microsoftが Windows 10の開発にもっと力を入れるのは、ちょっと期待できないのかも知れないと思い始めました。

地道な改善を続ける Apple

さて、話を Appleに戻しましょう。筆者は先の通り、Mac OS Xが誕生してから Appleの大ファンとして、あらゆるものを Appleで固めていた時期もありました。
しかし、2011年にスティーブ・ジョブズ氏が亡くなり、ティム・クック氏が後を継いでから、それまでの Appleの魅力だった革新的なプロダクトが次々に登場するという時代はなくなってしまいました。
前モデルと対して見た目も機能も変わらない iPhone/iPadや iMac。MacBookシリーズに至っては、10年以上デザインの大きな変更がありません。

しかし、Appleはスティーブ・ジョブズのような派手さはないものの、着実にユーザーの声を聞きながら改善を続けていました。

例えば、一時期キーボードがペコペコのものに改悪されていた Macも、今では元に戻り、評判の悪い Face IDも Apple Watchと組み合わせることで、マスクをしていても顔認証ができるようになるなど、ユーザーの不満点を1つ1つコツコツと潰してきています。

スマホ・タブレットと PCの融合

さらに、iOSと iPad OS、そして macOSで各デバイス向けの OSをしっかり開発し続け、スマホとタブレット・PCの融合をうまく果たしています。

さらには、イヤホンやヘッドホン、時計なども自社で開発することで、非常にスムーズなデバイス間連携を実現するなど、ユーザー体験をトータルでサポートできる開発体制を整えられています。

Appleシリコンで決定的になった Macの優位性

筆者が Macへの乗り換えを決めた決定的な理由の1つは、Appleシリコンの開発です。筆者はそれまで、Appleが macOSを今後どのようにしていくのかが気になっていました。
Apple的には、macOSは過去の産物として、iPad OSの開発に力を注ぎ、PC vs Macから PC vs iPadに構図を変えていくのかなと考えていました。
しかし、Appleシリコンが登場してその答えが出ました。Appleは Macを iPad化しようと考えているのだろうと思いました。

実際、すでに Appleシリコン搭載の Macで一部の iOS向けアプリが動作するようになっています。今後、これが発展すればスマホ・タブレット、そして Macで動作するアプリをワンソースで開発できるようになるかも知れません。

Rosetta 2の完成度

Appleはこれまで、OS9以前の OSからまったくアーキテクチャーの違う Mac OS Xへ、そして IBMのプロセッサーから Intelのプロセッサーへなど、大きな変化を何度か経験しています。その度に、それまでのユーザーを切り捨てて、大きな混乱を招きました。

今回、Appleシリコンに移行するにあたり、再びそのような過去のアプリケーションや周辺機器を切り捨てて行くのかと心配しましたが、その心配は杞憂でした。

Intel向けのアプリを動作させるための「Rosetta 2」が非常に完成度が高く、スムーズに環境を移行することができました。もちろん、Appleシリコンに最適化されたアプリは動作速度も速く、バッテリーの消費も減ってビデオの書き出しなどをしても、ほとんど熱も上がらずに作業ができます。

これまで Appleがスマホやタブレットで培った技術を、Macに昇華させた結果と言えるでしょう。

筆者はこの、Appleシリコンの Macへの将来性と、iPhone/iPadのこれからの進化を楽しみに、また Appleプロダクトを愛用していこうと思います。

コメントを残す